『グラハム』
騎士道を受け継いだ最後の車となった。
以前、アメリカのグラハム3兄弟は
自らの名前を冠した『グラハム・ブラザーズ』というトラックを
1920年代に作っていました。
しかし、会社は大メーカー『ダッジ社』に買収されてしまいました。
(「1度目のグラハム車」、ここで消滅)
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1920年代後半に、変化が到来します。
グラハム兄弟が苦境に陥っていた『ペイジ社』を買収し、『グラハム・ペイジ社』が誕生しました。
大メーカーのような汚いやりかたではなく、正々堂々と行うといった「騎士道精神」を掲げて。
1930年代には、『グラハム』が生産され始めます。
といっても、グラハム・ペイジ社の製品『グラハム・ペイジ』から
『ペイジ』の名前が消えただけでした。
当初はグラハム・ペイジ車と同じものでしたが、
1930年代半ばぐらいには
当時の車と同様に流線形デザインを持ったグラハム車になります。
ただし、そのぐらいから、販売は下降してしまうのです。
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1930年代後半、すごく前衛的なデザインのグラハム車が現れます。
この『グラハム 3.5リッター』は流線形で、なおかつ顔つきはサメのようでした。
鋭くて強そうな印象が強いです。
しかしながら
当時の似たデザインの車『コード 810』のように、
個性的過ぎたがゆえに売れませんでした。
この車には、騎士道的スタイルも確かに感じられました。
ですが、まるで威張るような雰囲気もまた、強く表れていました。
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最後のグラハム車は、1940年代に入って現れた『グラハム ハリウッド』。
もはや何が騎士道なのかを分からせなくするぐらいに、情けないスタイリングの車でした。
なぜか旧型グラハム車とデザインが似ていたコード 810のボディを流用しており、
顔つきはコード 810とは別物になっていました。
それは次のようなものです。
丸いヘッドライトが寄り目で、愛敬(あいきょう)があるものの、奇妙。
旧型グラハム車にはかっこよさが備わっていたのに、この車にはそれが感じられません。
ハリウッドと聞けば、有名な映画の場所を連想するでしょう。
注目されたいと願ってそのような名前がつけられたのでしょうが、
騎士道とは重々しい名誉を大事にするものです。
完全に騎士道と離れた車となってしまっていたのです。
残念なことに、グラハム ハリウッドを最後に、「2度目のグラハム車」は消滅します。
その名が再びよみがえることはありませんでした。
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なお、グラハム・ペイジ社の自動車部門は『カイザー・フレイザー社』に引き継がれたらしいです。
参考資料『ザ・コンプリート・エンサイクロペディア・オブ・モーターカーズ』