イギリスの我らが『ローバー』は、長い存続期間、ライトカーも小型車も大型車も、
基本的に上質ながらも地味な車でした。
そんなローバー車でも、時折スポーツカーよりもかっこいい車両が存在したのです。
まずはこれ。『ローバー 2000(P6・前期)』。
P6以前には、P5として知られる、オースティン車のアレグロのごとく醜く、
しかし頑固さを思わせる雰囲気を持ったローバー車がありました。
そのP5の後継として登場したのが、P6。
P5とは全く逆のデザインを持ったP6は、非常にかっこいい車でした。
直線基調で、フロント周りは渋い。
同じデザインでフロント下部に大口が開いた『ローバー 3500(P6)』もありましたが、
こちらはデザイン上、ちょっとやりすぎな感があります。
素晴らしかったP6も、後期になってエンブレムがボンネット上に出る等の変更がなされ、
魅力が薄まってしまったのが残念でした。
次は、P6の後継車、『ローバー 3500(SD1)』。
これも直線基調で、サルーン(セダン)ではなく5ドア・ハッチバックでした。
SD1は高級車なのに、立派なグリルがついていないのが特徴です。
他車ならグリルなしのデザインの処理が上手く出来ていないものが大半ですが、SD1は違います。
横長の鋭く個性的なヘッドライトに目が行くので、グリルレスはあまり気にならないのですから。
また、グリルレス部分を埋めるのが四角いボディと良く合う逆台形のローバー・グリルだというのが
上手く作用しており、すごくかっこいい。
当時のBLの看板車種は、レイランド車でもジャガー車でもデイムラー車でもなく、
ローバー車(SD1)だったのだと、今でも確信しています。
最後は、『ローバー 75(後期型)』。
美しいラインでまとまった全体像に、
伝統の香りと雄大さが同居したフロント周りが素晴らしい、大型サルーンです。
その美しいスタイリングでイギリスのみならず世界中を圧倒する・・・はずだったのですが、
世界中どころかイギリスでも販売は低迷し、その結果、下位モデル達とともにメーカーごと消滅。
ローバー車で一番かっこよかった75がローバー最後の車となってしまったのは、
なんとも皮肉なものですね。